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キツネアザミの名前の由来「植物名の由来」中村 浩  (著)が見つかりました。牧野富太郎への愛弟子の造反はあったのでしょうか?

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キツネアザミの名前の由来

本書の草の部 9「キツネアザミは眉掃にもとづく名」に次の文書を見つけました。

キツネアザミという名の由来であるが、牧野博士の「牧野新日本植物図鑑 『キツネアザミはアザミに似るが、よくみるとそうでないことがわかり、狐にだまされたよう いう意味である”と記されている。しかしこの解釈は全く珍妙なもので、少しも納得がいかない。
江戸時代の本草学者の中には、語源探究に当って”ああでもない、こうでもない”と慎重に頭 ひねってしている姿がみられるが、明治以降の植物学者の語源考察では、いささかこの慎 重さが欠け、皮相的な見方や単なる思いつきから解釈していると思われるきらいがある。
キツネアザミの語源を追求していくと、江戸時代には、この草はキツネアザミとはよばれず 「キツネノマユハケ」とか「マユハケアザミ」とよばれていたことが判る。 謎は、この”マユハ にあり、キツネアザミの話はこのマユハケに深い関連があるように思えてくる。
眉掃は
“眉を掃く”という意である。 江戸時代に婦人の化粧用具としてひろく用いられていたもので、長さ二寸、径一寸ばか りの竹の頭に狐の毛や兎の毛を束にして植えつけた ものである。化粧をするとき、眉にかかった 白粉の粉を払いのけるためのものでる。

この植物の花の姿がこの化粧用具によく似ているためにキツネノマユハケとか、マユハケアザミとかよんだものと思われる。
したがって、キツネアザミは、牧野博士がいわれたように “狐 にだまされた”という意味からのキツネではなく、その花の姿が 狐毛の掃に似ていることから、キツネノマユハケとよばれ、またその花がアザミに似ていることからマユハケアザミとなり、転じてキツネアザミになったものと思う。

本文75ページ「キツネアザミは眉掃(まゆはけ)にもとづく名」から抜粋

中村先生の想い

てんてん
てんてん

本書の「あとがき」1980年6月
中村 浩先生の一文に想いが書かれていました。

牧野富太郎先生について植物採集を行うようになってからも、執拗なまでに植物名の由来を尋 ねたものである。先生は、とにかく答えて下さったが、わたしは納得しかねると食いさがった ものである。この本でも、恩師である先生に対し、造反とも思える異説を主張してきたが、先生がもし在世しておられたら微笑みながら”ああ、そうか、そうか、そうかもしれないな”と賛同 して下さることも少なくないと自負している。わたし自身は決して反逆の弟子だとは思ってはい ない。

(植物名の由来「あとがき」から抜粋)

中村先生は牧野先生の懐の深さを良く知っていた、お弟子さんだったことがわかりました。

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